Masahiro Ikarashi

exhibition “STILL LIFE”

21 April - 14 May, 2023

「不均⻫」とその美について、考える。

完成し、終わりを提⽰することに美を提⽰する⻄洋的な美学とは相反する⽅法をとり、

「⾃分」以外の偶然性を積極的に作品に取り⼊れることを、五⼗嵐は提⽰しています。

カメラは⽬の前にある事実をそのままに記録し、フィルムの中に保存します。

通常はそこからトリミングをし、現代ではフィルターなど加えながら「⾃分らしい”世界”」を作品として提⽰します。

しかし、五⼗嵐が選んだ⼿法であるトランスファー・プリントは、写真を別のメディアへもう⼀度移⾏させ、

その際に⽣じるアクシンデントを採⽤しています。

五⼗嵐 正宏という⾝体的なメディアは、彼の経験と記憶、そして美への眼差しを内包しながら、

その⼿先を集中させ、情報を移動させます。

しかし、その⾏為中には様々な外的要因として移しきれないこぼれ落ちていく情報があり、結果的に作品は、

五⼗嵐の意図しない表情として⽴ち上がるのです。

これこそが社会や⾃然の本来の営みであり、また我々が通念的に共有している「世界」ではないでしょうか。

“STILL LIFE”と題されたこの展覧会では、作家本⼈によって作られたオブジェを、本⼈が撮影し、前述した⽅法により

作品として変容していきます。

その際に起こるエラーやノイズといった、作家の⼿に及ばない要素が加わった作品群は、様々な情報と条件を内包してい

ます。

松岡正剛⽒の著書「神仏たちの秘密」には、“不⾜によってこそ、完全や満⾜という物ではあらわせないことが出現するとみなす。

不⾜をいかに美しくするかということによって、⼈々の中に満⾜の美というものを感じさせるのです。

「枕草⼦」はそれを「⼩さきもの」と⾔いました。イサムノグチは「不完全こそが美だ」と⾔いました。"とあります。

五⼗嵐による静寂と向かい合う作品を提案したいと思います。